精神疾患の面接法 熊倉伸宏




前著「面接法」は出会いの心理学であり、本書は「出会いの診断学」です。

本書も前著と同じくコンパクトで薄いものですが、内容は外見から推測される以上のものとなっています。

著者はDSMではなく日本伝統の精神病理学、つまりヤスパースやシュナイダー由来のドイツ精神医学に乗っ取って各精神疾患の心理特徴を簡潔にまとめています。それはDSMの弱点とも言える症状貼りつけ型の診断とは異なっています。DSMが人間をバラバラに診ようとしているなら、著者は人間全体を診ようとしています。
もちろんそのような行為に不可能性・不確実性はついてまわりますが、あくまで一人の人としてとらえようとする姿勢の方が臨床には役立つと思います。医師は症状を観るのではなく、人を診ることが本質であると言えます。

著者はあくまで面接の中から症状を捉えようとするので、症状を表すわかりづらい堅い単語も実感を伴った生々しいものとなります。

DSMに基づく診断に飽き足らない人や精神病理学の入門書を探している人にぜひ。続きを読む
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治療的柔構造 岡野憲一郎

治療的柔構造―心理療法の諸理論と実践との架け橋

精神分析家の資格を持ち、精神科医としても日常診療にあたっている著者の新しい治療構造論。

建築学の柔構造から着想をえて、著者は揺れ動く外的現実にあわせて柔軟に変更され得る治療構造を提唱する。なぜなら複雑系の現実のもと、予測できない日常診療で剛構造は患者さんのニーズに応えられないためである。基本的な構造を取り決めたとしても、治療構造は治療者と患者さんとの間で取り決めたのだから、柔軟に揺れることは可能とする。そしてこのような構造こそが数多く存在する心理療法の基盤となる可能性をみる。
さらに著者は失敗心理学を提唱するが、柔構造的治療構造では失敗を失敗とせずに揺らぎとしてとらえられると説く。
著者は生きた中立性こそが大切だと述べるが、そのような中立性を心がける治療者だからこそ本書を書けたのだと思う。

最近では私もこのような柔らかい、ある意味では至極常識的な心理療法がたくさんの人に貢献できるのだと感じている。薄まることも凝集することもできるのだから。その分治療者には幅広い知識と技術が求められるだろう。
しかし、もちろん最初からこの自由な構造で心理療法を行うことは無手勝流になってしまう危険性もある。著者が最初に精神分析で型を学んだように、最初はある学派から型を学んでそこから少しずつ離れていくという守・破・離が大切なのだと思う。

数多くの学派の中で自分の立ち位置を定められない人には助けとなるのではないだろうか。

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面接法 熊倉伸宏



この本は初心者向けのとしてあるが、それ以上の金言が含まれていると思う。

最初に知っておくべきこととして、著者は「出会いの心理学」の本として書いたとのこと。その通り、初回面接から始まり、話が深まっていくにつれて面接者と来談者の関係がどのように変化していくかを丁寧に平易な日本語で書いている。途中途中で初心者が陥りがちな不安についても触れていて親身になってくれている。
また様々な理論との付き合い方、ケースレポートの書き方にも言及している。このような点からも研修前、学生のうちに読んでおくととても良いと感じた。
また著者は土居健朗の高弟とされ、本書を「方法としての面接」の姉妹書としていて、大きさも同じにしてある。
「方法としての面接」を読んだ人におすすめです
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宗教と科学の接点 河合隼雄

宗教と科学の接点は、関係性がなさそうな宗教と科学の間にも共通点、接点があるのではないかということで書かれている。宗教と科学と言うと水と油のように相容れないものとの印象が強い(特に科学は宗教を扱わないことが多い)。しかし、著者は近代科学とキリスト教は対立的ではなく、むしろキリスト教が近代科学の姿勢の前提に潜んでいるとする。
著者は臨床心理学者ということで、心理学、特にトランスパーソナル心理学の知見を引用しつつ近代科学に潜む宗教性を明らかにしようとする。本書は1986年出版で、雑誌に連載されていたということでわかりやすい語り口で、著者のまだ発展途上の宗教性の考え方を知ることができると思う。

科学と宗教の関係、河合隼雄の宗教性の考え方の展開の仕方に興味がある人にオススメです。

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閉ざされた心との対話 河合隼雄

閉ざされた心との対話―心理療法の現場から〈上〉 (心理療法の現場から (上))は著名な臨床家である著者が、心理療法の現場を広く一般の人に知ってもらいたいとの思いから、現場を持つ臨床家との対話を収めたものである。
出版は9年前だが、おそらくカウンセリングや心理療法を取り巻く状況は変わらず、誤解や言葉だけ知っているということも多いだろう。その意味ではまだまだ本書の内容は古くなっていないと感じる。
しかし、最近の臨床現場の状況と言えば少し変化していると思う。本書の臨床家は思春期や青年期のクライエントと会っている方が多いが、おそらく現在のクライエントはまた少し違うだろうし、実際にそういう話をよく聞く。この世代は時代の感性に一番影響を受けるのだろう。
本質的なものは変わらず受け継がれていくことが必要だが、時代によって変わる部分は合わせて変化することもまた必要である。

臨床の現場を知りたい人、臨床心理士になりたい人にオススメです。

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昔話と日本人の心 河合隼雄

昔話と日本人の心 (岩波現代文庫―学術)は日本に伝わる数々の昔話を分析、検討して日本人の根底に横たわる日本人の自我の在り方を明らかにする。特に著者は西洋の昔話との比較し、昔話の深層のように西洋における深層心理学(ユング心理学)を用いて、それらの枠に収まらない日本人独自の確固としたアイデンティティを見いだそうとする。
著者は他にも「日本人」という病母性社会日本の病理など「日本」に焦点を当てた著作を出している。その背後に数多くの臨床経験と本書のような昔話の検討などがあることを知ると理解が立体的になり、著者の理解の奥の深さに圧倒される。日本の母性原理の強さに言及するものは多いが、ここまでの深みをもって言及したものは著者の他には数少ないと感じ入る。

昔話に象徴される日本に興味のある人、日本人の根底に流れる無意識に興味のある人にオススメです。

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愛と心理療法 M・スコット・ペック

愛と心理療法は経験豊かな精神科医が、平易な語り口で、専門家でない人たちに語りかけた内容になっている。

そのため専門書のような体制になっておらず、一般の人が実際の生活で役に立てられるように書かれている。このような書物が一般的になっていることが欧米での心理療法の広がりを感じさせる。カルロス・ゴーン氏などビジネスパーソンの愛読書でもあるらしい。
前半は生活していて直面する様々な課題を乗り越えるための訓練の重要性とその内容を明かす。後半をその訓練を支える愛について、そして愛と宗教性の関係について語られている。おそらくどのような文化であっても、愛と性愛の区別をしておくことは重要だろう。愛と宗教をめぐる3つの症例はとても迫力がある。おそらく日本でここまで宗教性が問題になる事例は少ないだろう。最後はやや神秘主義的になり、受け付ける人と受け入れられない人がいるだろう。

愛とは何か、ビジネスや心理療法に愛を生かすとはどういうことか知りたい人にオススメです。


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カウンセリングを語る(下) 河合隼雄

カウンセリングを語る〈下〉 (講談社プラスアルファ文庫)では、カウンセリングと日本、カウンセリングと宗教、カウンセリングと魂、など著者が精力的に取り組んだテーマについて語っている。
まさに河合心理学。
ややもすると、このようなテーマだけ読んでカウンセリングをうさんくさいと取る人もいるかもしれない。
しかし、著者は別の著作で「若い時は宗教も魂もうさんくさかった。年をとって語れるように納得してきた」と書いている。
語っていることは臨床の行き着いた境地といってもいいだろうか。

上を読んだ人、カウンセリングの奥行きを知りたい人にオススメです。


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カウンセリングを語る(上) 河合隼雄

カウンセリングを語る〈上〉 (講談社プラスアルファ文庫)は講演録とあってとても平易な言葉でカウンセリングについて書かれている。
しかし、中身は決して平易ではない。むしろ宝に満ちている。
(上)ではカウンセリングとはどのようなものか、基本的な態度と姿勢を冗談や実例を交えつつ河合が語っている。
その軽妙な語り口にどんどんと読み進んでいってしまう。
頭にちゃんと残るように咀嚼しながらでなければいけない。

カウンセリングに興味がある人、カウンセリングについて知りたい人にオススメです。

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「日本人」という病 河合隼雄

「日本人」という病は著者の後期の講演録である。

第二次大戦から敗戦後の日本の変貌、さらにアメリカ・スイスへの留学体験をもとにした著者の日本人と海外との違いについての講演が多い。
最近はどんどん日本も西洋化していると思ってはいるが、本書を読むとやっぱりまだまだ日本と海外は違うなと実感する。同じように行動・思考しているように見えて、その背景は異なるということがよくわかる。

日本人の特色は何か、日本人として生きるとはどういうことか、ということを考えたい人にオススメ。

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